オリーブの実の利用方法の注意です。
ここでは、実の利用に際して注意してほしいことを列記します。
オリーブの実を料理して食べるのは大変楽しいことで、秋から冬の収穫が待ち遠しいものですが、調理で注意してもらいたいのは食中毒を起こさないようにすることです。
オリーブの食中毒では「ボツリヌス菌」による食中毒が主にあります。
ボツリヌスの名前の由来はヨーロッパで昔からソーセージ類を食べた時に中毒を起こしていたので、そこから来ているということです。今のように知識がなくかなりの被害を受けていたようで、恐れられていたそうです。
ボツリヌス菌は細菌でクロストリジウム属の仲間で、破傷風菌の仲間です。*細菌は細胞壁を持つ構造なので植物に属します。
自然界では土や水辺とかに生息しています。
今のところ、A、B、C、D、E、F、Gまでの7つの型(タイプ)が見つかっています。
偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)の一種で、酸素が普通に有るところでは生きられません。これは酸素を利用できないので、取り込むと体が対応できず破壊されてしまうからです。(酸素除去酵素を持っていない為。)*酸素が少ないところでは生きていることもあります。ここでは酸素の少ないところを嫌気性(状態)といいます。
元々はこれらの嫌気性菌は原始時代の地球では活発に活動をしていた(らしい)のですが、光合成をするストロマトライトなどの微生物が発生し酸素を放出するようになると、酸素の無いところへ追いやられ細々と生きるようになったと言われています。
嫌気性菌は酸素の有るところでの生育活動はできないのですが、完全に死滅するのかと言えばそうではありません。
生存条件が悪くなると芽胞(かほう)というある種の頑丈な膜のようなものを、自身の体から作り出して被り休眠状態になり、生育条件がよくなるまでじっとして生存をします。 イメージ的には卵の殻を思い浮かべてもらうと分かりやすいと思います。
この芽胞というのは消毒薬や熱に大変強く、ボツリヌス菌芽胞では100度で6時間以上加熱しないと死滅しないのです。
で、もう一つ問題になるのがボツリヌス菌の作る「ボツリヌス毒素」です。
これは地球上で最強の毒と言われ、大した量がなくても人類を全滅させることができるそうです。
このボツリヌス毒素は食中毒ではかなり問題になってはいますが、しかし、熱には弱く100度で加熱すれば1~2分ですぐに毒性がなくなる(不活性化:壊れること。)と言われています。
酸素の無い、他の好気性の細菌達が死滅した状況になると、ボツリヌス菌は芽胞を脱いで活動を始め毒素を分泌します。
市販されている物では、缶詰め、レトルトパック、瓶詰め、真空パック、ソーセージ、ハム、ウインナー、練り製品・竹輪(ちくわ)、はんぺいなど、中身が酸素に触れない食品に危険性が有るので、日本ではこれらの食品には食品衛生法の厳しい基準が定められており加熱殺菌がされています。これらの食品は殺菌処理後に細菌検査をして合格しなければ出荷できないので安全に食べれるのです。本来の安全性から言えば人体に影響が無い程度の量で食中毒防止効果が有る食品添加物(保存料)を使うのがよいのですね。加熱殺菌と保存料の2重対策にすれば本当は安全性が高まるのが事実です。ただ、最近では風評が有るので、保存料を使うところが減ってきて製造加工方法の改良と酸味料により安全性を確保しています。*練り製品は食前に匂いをよく確認し、十分な加熱をして食べること。他のものでも十分な加熱がよい。
これを長々と書いたのは、自家製中毒が多いから注意してもらいたいからです。
特にオリーブの実の食用での取り扱いに関しては、ほとんどの日本人が素人同然です。
この調理についてどれくらいの衛生レベルが必要になるのかと言うと、小豆島で売られているオリーブの青い実の新漬けなどは安全で美味しいのですが、家で作る時にはこの小豆島の製造レベルがないと危険です。
いい加減にしていては、必ず食中毒を起こしてしまいます。
オリーブの実を使う前に、必ず苛性(かせい)ソーダで洗浄してから使いますが、これは灰汁(あく)である渋味を抜くのと同時に食中毒菌を減らす効果も有る為です。*苛性ソーダは強アルカリ性で蛋白質(たんぱくしつ)を溶解します。
オリーブオイルを作る時でも実の汚れは、少なくとも目で見て汚れがなくなるまで十分に水道水で洗います。絞ったオイル(油)もすぐに使います。
オリーブペーストにはレモン果汁(PH2~3)は必ず使いましょう。これは酸性(PH)が4.6以下ではボツリヌス菌は繁殖できないので効果が高まるからです。
冷蔵庫での保存は厳密な温度で3度以下にすれば繁殖しないということも分かっています。*これは冷蔵庫メーカーに問い合わせましょう。冷凍できれば、尚安全です。
オリーブペーストの瓶詰めの保存食を作る時には殺菌を十分にしないといけません。
が、しかし、これは何度でどれくらいの時間にすればよいのか分かりますか。
仮に完璧に温度と時間を守っても問題は有るのですよ。
殺菌温度とは対象物の中心部の温度が十分に有るのか、ということです。
例えば、肉の塊を焼いたり煮たりした時に中まで火が通っていなことが有りますね。
これは、中心部の殺菌温度が不足しているということです。
この温度に中心部がならないと殺菌ができていないので、ばい菌達は生き残ることになります。
オリーブペーストの瓶詰めの場合には中心部の温度を測ることはできませんね。
それにお湯による煮沸(しゃふつ)消毒は大して温度が上がりません。どうしてかと言えばお湯というのは沸騰しても100度以上に絶対ならないからです。
もし、確実に殺菌しようとすれば耐熱性の容器に入れて120度で2時間以上の加熱が必要です。これ以下では安全は保証できません。仮にこの温度で殺菌できたとしても、今度は細菌検査を一般家庭ではできませんから本当に安全かどうかは分かりません。
食品製造では例えば缶詰めではオートクレープ(蒸気圧力殺菌装置)で120度で2~4時間の殺菌を行います。この後に細菌検査をして合格しないと売ることはできませんが、これだけしていても失敗して全部廃棄することもあるのです。それに家に置いてある缶詰めの蓋(ふた)が膨らんで食べれなくなったことは有りませんか。これはボツリヌス菌などのばい菌が繁殖してガスを放出している証拠でもあります。検査に合格しているものでも古くなるとこのざまです。
オリーブの塩漬けも塩を十分に使います。少ないのは絶対に駄目です。塩は水分を調節することにより細菌の繁殖を抑える作用があります。元々は天然の保存料(剤)なのです。*普通の漬物でもこの原理を利用しています。塩に弱いばい菌達は繁殖できず、塩に強い乳酸菌や酵母菌が活躍して作ってくれるのですね。菌は漬物の野菜に自然に付いているので入れなくてもよいのですが、ちやんと洗った方がばい菌が少なくなるので失敗はしません。まあ、糠漬(ぬかず)けの原理も同じですね。
このように食中毒細菌の殺菌というのは、人類の歴史と共に有る非常に難しい技術なのです。
オリーブのことがよく分からない人は、生で用いず、食さないことです。これは原則です。
へんな臭いや味がしたら絶対に飲み込んではいけません。
すぐに出して十分に口を漱(すす)ぎうがい薬を使います。
少しでも飲み込んだり、心配なら内科か外科へ行きます。
確実性を持たせる為に、必ず100度以上での加熱を満遍(まんべん)なく、20分以上して食べるようにすればオリーブのボツリヌス菌自家中毒は防げます。
罹患した場合のボツリヌス菌食中毒の治療方法は、抗毒素血清(中和抗体)の投与によりボツリヌス菌毒素を無毒化(無力化)することにより行います。
神経系に働く毒素で全身が徐々にまともに動かせなくなります。毒が体内から消えるまで入院し人口呼吸による管理が必要となります。
乳児ボツリヌス症を防ぐ為に、乳幼児には蜂蜜(はちみつ)を与えないことは常識です。芽胞が嫌気性のお腹(腸)で孵(かえ)ってしまい活動を始めるからです。
また、感染症でも有るので、傷口からも菌が入り毒素を出して罹ることも有るので、怪我をしたら必ず水道水(塩素による殺菌が期待できる。)で汚れを洗い流し、消毒薬で殺菌すること。傷が深ければ外科へ行くこと。尚、同じクロストリジウム属の破傷風とも症状は似ています。
まとめ!!
100度では6時間以上の加熱をしないとボツリヌス菌は死滅しません。
ボツリヌス毒素は100度で20分以上の加熱で確実に分解できます。
冷蔵庫の温度は正確に3度以下で保存。
PHは0~4.6では繁殖できません。
水分が少なくても繁殖できません。
参考資料は検索で「ボツリヌス」とすれば、すぐに出てきます。
今回はボツリヌス菌と菌毒素による食中毒を取り上げましたが、他にも食中毒菌は沢山有りますから注意してください。
詳しい情報を確認したければ、お医者さんか衛生関係の役所へ聞いてください。また、国民生活センターサイトに「オリーブのボツリヌス菌食中毒」の事例があります。
尚、夏の時期に食中毒が多くなるのは食料品を冷却せず持ち帰るので、食品の温度が上がってしまいばい菌繁殖するからです。一度繁殖したら冷蔵庫へ入れてもばい菌や分泌された毒素は残ります。この時に食べる前に十分な加熱をすればボツリヌス菌と毒素はそれ程怖いものではありませんが、以前の牛乳の事故のようにブドウ球菌、あるいは冷ご飯(穀類など)のセレウス菌とかでしたら100度30分程度ではとてもでは有りませんが防ぐことは無理です。これらは繁殖していても匂いも味も異常を感じず、知らずに食べてしまうことが多々有ります。ですから、残りものは冷蔵庫に入れておいてもできるだけ早く食べ、日にちが経てば捨てるようにします。食べ物を粗末にしてはいけませんが、命を失うのとどちらがよいのかを考えるまでもありませんね。抵抗力の弱い、幼児や老人では特に注意します。
食中毒菌は野菜にもしっかりと付いていますから、野菜は食べる前に水道水でしっかりと汚れを洗い流します。最近ろくに洗わないで食材に使用しているところが数多くありますが、こういったところではどんなに有名でも私は食べないようにしています。人に食べさせるということが分かっていないのです。安全といえるのは、缶詰め、レトルトパック、冷凍食品、コンビ二弁当、缶・ペット飲料、インスタント食品、LL牛乳です。世間で見るとこれらの食品がまともな作り方をしているくらいです。*もちろん日本製が安全です。
食中毒の防止には、食品を低温(10度以下、できれば3度以下)で家まで持ち帰ることが重要で温度管理が大事なのですが、このことを分かっている人は余りいないようです。家の冷蔵庫はできるだけ低い温度が望ましいのです。本当はね。
オリーブの実の使い方や育て方に付いては
1 オリーブの絵本
2 はじめてのオリーブ
3 まるごとわかるオリーブの本
が詳しいです。
オリーブの実の砂糖漬け、塩漬け、オイル漬け、ペースト、など多彩な料理や利用方法が掲載されています。
自家製食品の中毒は自己責任ですからくれぐれも慎重に、自信の無い方は止めましょう!!
オリーブを広く皆に知ってもらい、安全に使ってもらいたいのでこの話をまとめました。
わからないことやその他はOlive&Herbやオリーブ&ハーブの図書ガイドから見てください。